妊活に鍼灸治療は効くのか?
世界的に注目を受けている鍼灸治療。
日本ではあまり広まっていない鍼灸ですが、欧米、中国、韓国などではかなりの利用者がいらっしゃいます。
欧米の研究では、妊娠率を上げるという研究論文がたくさんあります。
果たしてその効果はいかがなものなのでしょうか?
私たちは針灸師ですので、もちろん効く!と思って実践いますが、一般の方にはまだわからないことが多いのではないかと思います。
実際、効く、効かないと言っている時点で、あやふやな感じです。
針灸は東洋医学の一部分で、中国発祥で数千年の歴史があります。
今のように血液検査や超音波、レントゲンなどない時代ですの、細かく、そして客観的に人体を探ることはできませんでした。
できることとすれば、「よく観察すること」です。
実際は、自覚症状や他覚症状、食事や運動、住環境、体格、さらには季節や気候など身の回りのものを総合判断することが大切でした。
「腰が痛い」と言えば、いつ、どこで、どこが、どのように痛むのか、全身に何か反応はないか、普段の生活はどのように、痩せすぎていないか、筋肉量はどうか、寒いか、雨の時につらいかなど確認します。
何らかの反応が出ているということは、体内や体外で何かが起きていると判断できます。
これらの情報は、個々の状態を表すものですね。
つまり人はみな、違う。
個に重きを置いた見立てがあったのです。
その何かの反応が病的なものか、生理的なものかを判断し、針灸や漢方、気功などを施していきます。
妊活をしていると、「あの人は〇〇で妊娠した」という情報が多く出回っています。
が、
その〇〇という情報は赤の他人が実践したものであって、年齢も体格も、生活スタイルも、性格、運動歴も、何もかも違うのです。
「〇〇クリニックに行ったら1回で妊娠できた人がいる。だから私も妊娠できると思うから行ってみようかな。」
残念ですが、そううまくはいかないでしょう。
個体差を考えることはとても難しいのです。
病院での医療も、東洋医学の世界も経験してきた私からすると、お互いに良し悪しがあり、それの良いところどりをすることが大切なんだと思います。
ただし、良いところどりをするにしても、病院は機器の充実、医師の経験など最高峰の病院を選択する必要があります。
鍼灸院の場合は、知識と技術はもちろんですが、施術環境、施術者への安心感などその他のエッセンスがとても大切になることを忘れてはなりません。
何せ、受け取る側も様々で、ものさし的なものがあいまいで、一定的なもので評価ができないものなのです。
患者さんから聞いたいくつかのケースをご紹介します。
<ケース1>
初めて予約をするとき、ホームページを見て、良さそうだなと感じ、予約をします。
実際、鍼灸院に行くと、自分の好きな空間で、心地よいと感じます。
カウンセリングで施術者は丁寧で、嫌な感じがしない、むしろ安心感がある。
聞きたいこと、知りたいことをなんでも応えてくれる。
針灸治療が始まると、タオルの使い方や鍼灸、マッサージが心地よく、ついウトウトしてしまう。
施術が終わると、「あ~気持ちよかった、なんだか身体が軽くなった」と感じる。
アフターカウンセリングで、これからどうのように体を整えていくかのアドバイスをもらう。
次の予約をしようと思う。
<ケース2>
初めて予約をするとき、ホームページを見て、予約をした。
針を刺して、そのままの状態で、寝かされ、その後針を抜かれ、治療終了。
何が何だかよくわからない状態で終わった・・・。
やる意味あった?
<ケース3>
初めて予約をするとき、ホームページを見て、電話をしたら電話対応があまりにも悪く、予約をやめた。
<ケース4>
初めて予約をするとき、ホームページを見て、予約をした。
実際、鍼灸院に行くと汚れている、不潔感がある・・・。
もう行くのはやめよう。
<ケース5>
初めて予約をするとき、ホームページを見て、予約をした。
施術者の印象が悪い(怖い、不潔、コミュ障、肥満、肌荒れ・・・目的に応じて変化)。
信頼できない。
次回は止めておこう。
<ケース6>
初めて予約をするとき、ホームページを見て、予約をした。
施術者の印象も良く、丁寧だったが、施術がどうもいまいちだった。
費用と施術のバランスが見合わない。
次回はどうしよう?
<ケース7>
初めて予約をするとき、ホームページを見て、予約をした。
とても傲慢な施術者で、常に上から目線だった。
ストレスを感じてしまう。
これらは鍼灸院に限らず、病院でも同じかもしれません。
特に不妊治療に通っている人は女性なので、気持ち、雰囲気などを大切にする方が大勢いますので。
針灸などの代替医療は「プラシーボ」と言われています。
もちろんちゃんとした効果も期待できるのですが、プラシーボでさらに倍増の効果が期待できるのです。
まさに「病は気から」という言葉がぴったり来ますね。
こういったことは多々起こりうることです。
ダイエット目的で通おうと思っていたのに、施術者が太っているのでは説得力はないでしょうし、健康になりたくて行っているのに、健康には見えないのではちょっと行きにくくなります。
自分自身で体験して、もっともご自身が納得できる鍼灸院を探し当てることが大切です。
そうでなければ、針灸の素晴らしい効果は期待できないのかもしれません。
病院は統計学をもとに成功率の高い方法をチョイスし、治療に当たります。
このため、卵子のグレードやホルモン、子宮内膜の状態から「〇〇%の確率で妊娠する」という病院もあります。
不妊の方をいくつかのグループに分類し、そこの当てはめ、治療法を決定していきます。
東洋医学の場合は、個を観察して、針灸を施していきます。
身体を観察、触診、問診をしてどういう状況なのかの判断をしていきます。
状態の傾向はあるものの、不妊を同じ不妊とは考えることがとても難しいのです。
実践する鍼灸師もまた、感じ方や考え方に個人差があります。
それも相まって複雑化するのでしょう。
針灸師の治療法にはいくつかの方法があります。
私たち鍼灸師が使用するツボは361個あり、またそのツボをつなぐ川のような経絡が20本あります。
ツボとは一体何か?
そうですね、難しい質問です。
何かと聞かれれば「パワースポット」とでもいえばよいのでしょうか?
気というエネルギーの集まったところであり、その気をコントロールすることで体の不調を改善していきます。
実際にツボの場所には何があるのかと聞かれても、具体的に説明することはできませんが、数千年の時を経て、人々が経験した効果を脈々と受け継ぎ、現在に至ります。
たとえば、「足三里」というツボが足にあるのですが、このツボを押すと腸が動きます。
神経かといわれれば、関係ないとは言えないものの、神経とも言えず、ただ動くという事実、そして足三里の所属する経絡はお腹を通っています。
人体にはまだまだ不思議なことがたくさんありますね。
まとめると針灸治療は個を対象とし、体中に表れている反応を探し出し、効果のあるツボや経絡に針や灸を行います。
気のコントロールをすることで自然治癒力を高めていきます。
それ以外にも、筋肉や神経といった解剖、生理学的なものへの刺激という方法もあります。
電気を流す鍼治療を受けたことがある方もいるかもしれません。
筋肉は収縮と弛緩を繰り返す習性があるため、電気を流すことで、緩める働きがあります。
神経は運動神経や痛みや温度などを感じる感覚神経、自律神経系があり、ピンポイント、もしくは周囲、さらには圧迫しているものへの刺激で神経の調子を整えようとします。
この神経への刺激は、筋運動だけではなく、内臓機能、血行、痛みなどにも効果を引き起こせる可能性があります。
よって針灸治療の可能性は
・ツボを使って気血の巡りを改善する
・五臓六腑の働きを正常化する
・運動効率を上げる
・感覚を正常化する
・ホルモンや血行、消化吸収など自律神経系を正常化する
などが期待できるということです。
ただし、治療院の環境や施術者の性質も影響を与えるということも再度念を押しておきます。
私たちの身体は日々の生活習慣によって作られていきます。
積み重なってできていくものなので、改善するにも積み重ねていく必要があります。
相性の良い鍼灸師を見つけ、妊娠しやすい体質改善、健康増進を目指しましょう。